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2009年06月19日

居眠り磐音 江戸双紙 1〜27

佐伯泰英:著者
双葉文庫

1.陽炎ノ辻(かげろうのつじ)
2.寒雷ノ坂(かんらいのさか)
3.花芒ノ海(はなすすきのうみ)
4.雪華ノ里(せっかのさと)
5.龍天ノ門(りゅうてんのもん)
6.雨降ノ山(あふりのやま)
7.狐火ノ杜(きつねびのもり)
8.朔風ノ岸(さくふうのきし)
9.遠霞ノ峠(えんかのとうげ)
10.朝虹ノ島(あさにじのしま)
11.無月ノ橋(むげつのはし)
12.探梅ノ家(たんばいのいえ)
13.残花ノ庭(ざんかのにわ)
14.夏燕ノ道(なつつばめのみち)
15.驟雨ノ町(しゅううのまち)
16.螢火ノ宿(ほたるびのしゅく)
17.紅椿ノ谷(べにつばきのたに)
18.捨雛ノ川(すてびなのかわ)
19.梅雨ノ蝶(ばいうのちょう)
20.野分ノ灘(のわきのなだ)
21.鯖雲ノ城(さばぐものしろ)
22.荒海ノ津(あらうみのつ)
23.万両ノ雪(まんりょうのゆき)
24.朧夜ノ桜(ろうやのさくら)
25.白桐ノ夢(しろぎりのゆめ)
26.紅花ノ邨(べにばなのむら)
27.石榴ノ蠅(ざくろのはえ)

春風のように穏やかで、思いやりの深い青年武士・坂崎磐音。
その剣は「まるで春先の縁側で日向ぼっこをして居眠りを
している年寄り猫」のようだとわれるくらい、のどかな
構えであるが、その腕は半端なく、強い。
居眠り磐音の異名をもつ男の波瀾万丈な生き様を描く、
平成の大ベストセラーといわれる書き下ろし長編時代小説。

1週間くらいかけて、ちまちま書き進めてみました。
長いです(^^;
27巻分のあらすじも書こうと思ったんですが、長くなりすぎで
どうしようもなくなると思ったのでやめました。
なので、思ったままのつらつらをば。
ネタバレというより、わかるひとにしか分からないみたいな
内容ではないかと思いますが、一応、ネタバレ注意!に
しておこう(^^;


とりあえず、27巻まで一気読み。すでに2巡目、3巡目という(笑)
2巡目以降は気が向いた巻を適当に抜いて、な読み方ですが、
どれを抜き出しても結局夢中になるという。。。
こんな読み方するのは、北村薫氏作品だけだったんですが。
1作1作は短編みたいな区切りをつけられるので、
「坂崎磐音」という大きな流れが頭に入っていれば、問題は
ないですね。

それにしても、坂崎磐音、ほんとうに不思議な男です。
男も女も、ひとたび関わるとその人柄に惚れてしまう。
穏やかで長閑、欲もなく、その強さを鼻にかけることもない。
今津屋から始まった人脈がじわじわと広がりいっても、
必要以上の関係を強いることもない。
どんなに、懐が淋しくても、せっせと日傭取りを自分で探す。
今津屋に行けば、ご飯くらい食べさせてくれるだろうくらいな
付き合いになっても、決して無心しない。甘えることはしない。
豊後関前藩が藩主・福坂実高にしても、
玲圓から繋がった御側御用取次の速水左近にしても、
中川淳庵から繋がった修理大夫(しゅりだいぶ)・酒井忠貫に
しても、その面識をひけらかすことは決してしない。
常に距離を保ち、自分は下っ端、の立場を崩さない。
けれど、いざ頼りにされれば、全力で立ち向かう。
そりゃー惚れますわよ。(武左衛門はこれの正反対で、なぜか
憎めないんだけど、信用は、全くない・笑)
つーか、由蔵さんなんかは、その辺歯がゆいみたいでね(笑)
歯がゆいけど、信用度はうなぎ上りで、ついには関前藩の借金の
担保にまでされちゃう(笑)
実高さんは「わしは磐音を手放した覚えはない」と号泣する有様。
(これ、将軍家治さんにも「惜しい家来を手放したな」といわれ、
さらに大泣きするハメに)

とにかくその謙虚というか遠慮深いというか、もうちょっとおおらかに
構えてもいいんじゃないの?というくらい、慎ましやかな性格は
時として、周りを呆れさせ、憤慨させることもあるんですが。
たまに自分自身でも縮こまっちゃうこともあって、師匠であり
後に養父となる佐々木玲圓にもしばしば諭されています。

私の好きなシーンのひとつが、養子縁組を願う時の玲圓の説得。
勝負を挑まれ、また様々な事件に関わるうち、やむにやまれずとはいえ
人を斬り、命を奪ってきた、そのように穢れた自分が、道場を継ぐ
ことなど許されるのだろうか、という葛藤に、答える玲圓の言葉。
「人を斬ることにおいて、殺人者と活人者は紙一重よ。
それさえ承知ならだれがそなたの行為を非難できよう。
見てみよ、そなたの周りには西の丸様をはじめ、幕閣の方々、
今津屋のような豪商、桂川甫周どのや中川淳庵どののような
お医者から深川暮らしの人々まで、多彩な人材がそなたと親交を
保っておるわ。それは偏にそなたの人柄を信じてのことじゃ。
こればかりは佐々木玲圓も足元にも及ばぬ」

(19巻-梅雨ノ蝶 第二章・不覚なり、磐音 より抜粋)

その西の丸様こと、徳川10代将軍の嫡男・家基さんですが、日光社参の
出会いで確か15歳。(ただし、かぞえ。満年齢なら13か14歳)幼いですね。
磐音を心底慕っていると思います。でなきゃ、宮戸川に連れて行けなんて
わがまま言いませんよ。自分の命は磐音がちゃんと守ってくれるという
絶対の信頼があるからこその密行実現なんです。
そんな家基さんですが、史実では18歳(満16歳)で急死してます。
たぶん、この宮戸川が最後の思い出になるかと思われますが。。。
悲しいけど、どう展開していくか。
この家基さんと磐音のからみも、すごく好きなシーンだったから、
なくなっちゃうのは寂しいよなあ。

さて、忘れてはならない、この話は恋愛小説でもあります。
幼き頃よりの許嫁・奈緒。明和9年の悲劇から、すれ違い続けの磐音と奈緒。
白鶴太夫として吉原に落ち着いた奈緒を陰ながら見守ろうという磐音。
その悲恋を悲しみながらも、磐音に惹かれていくのを押さえられないおこん。
三角関係といえばそうなんでしょうけど、3人とも自分の意思では
どうしようもないわけで。
自然に任せてるうちに、落ち着くところに落ち着いたと。
この話の時間の流れで、一番変わったのは、やっぱりおこんでしょう。
深川の一町娘が、御側御用取次の速水左近の養女となり、武家の嫁となるの
ですから。

このおこんも磐音に負けず劣らず、誰からも好かれる気持ちのいい女性。
深川っ子らしく、伝法な啖呵を切る、明るく元気いっぱいの今小町。
次第に落ち着きのある物腰に変わっていきますが、それでもうっかりすると
地がでて、義母・おえいに呆然とされ、磐音に笑われています。
磐音の父・正睦も母・照埜もおこんがすっかりお気に入りで、世の中の嫁が
羨ましがるであろうくらいのベタ惚れっぷり。
本当に、坂崎家に欲しかっただろうに。
井筒遼次郎がいい嫁さんみつけられるといいですね。
(磐音の妹・伊代の旦那・井筒源太郎の弟で坂崎家に養子に入り坂崎を継ぐ
ことが決まっている)
(ん?まてよ?まさか、早苗とはいわんやろな?>嫁さん=武左衛門の娘。
年齢的にそこそこ釣り合うし、あの親父の子にしては鳶が鷹だが;;;
考え過ぎか?^^;)

そして、奈緒ですが。
白鶴太夫として吉原に君臨してきましたが、山形の紅花商人・前田屋内蔵助に
身請けされ、それも妾ではなく正妻としてであり、かなり幸せな結末かと。
それぞれがそれぞれに見つけた、幸せへの道を歩み進んでいくことと
思われましたが奈緒に関しては、その後も結構波乱があったり。

その他にも、西の丸様をうとましく思う田沼意次親子率いる下忍集団・雑賀衆
との戦いとか、ハラハラドキドキも満載。
いや、雑賀泰造なんて、ふつーでしたね。その後の奸三郎丸なんて、まるきり
妖怪変化じゃね(笑)
現実主義でなきゃ勤まらない医者である桂川さんが泣くわ、そりゃ(笑)

で。
いきなりですが、このお話の登場人物で一番好きなのは?(磐音はさておき)
私は、ダントツで佐々木玲圓師匠です。
このひと、相当おちゃめです(笑)
佐々木道場の主でかなり名の知られた剣術家で、門弟からすれば雲の上の人。
結構堅物なイメージでしたが、磐音が養子に入るあたりから、
だんだん崩れてきて(笑)
とにかく磐音がかわいくてかわいくてしょうがないという(大笑)
30過ぎたおっさんにかわいいもなにもないが、技量第一・気性は穏やか・
見識礼儀の心得あり、幕閣の者とも無理なく親交を保ち。
これ以上にはない跡継ぎなわけで。
しかも、おこんももれなく付いてくる(笑)
その祝言の為の段取りにあたっての玲圓と妻・おえいの掛け合いは
爆笑もんです。
早くうちに二人を迎えたい玲圓は、段取り無視であーだこーだ。
おえいに「犬か猫の仔を貰い受けるのではございません。
速水様に呆れられますぞ」とピシリ。
尤も、おこんを養女に迎える速水家でも、左近さんは奥さんから同じ小言を
食らっていますけどね(笑)
50半ばでも、磐音と対等に稽古になる強さも好き(はーと)
一番好きなシーンは、道場の扁額の揮毫を願った、寛永寺座主天慧師の
前での技披露ですな。玲圓と磐音の技の応酬。
決して長くは描かれていないですが、その張りつめた緊張が心に残りました。
師弟の、そしてゆくゆくは親子となるふたりの、阿吽の呼吸がすごく
好きです。

逆に嫌いなのは?
実は、私、奈緒が大嫌いです;;;
つか、白鶴太夫となるまでは、いや、例の「襖越しの最後の別れ」までは、
普通に涙・涙でよかったんですよ。はい。
大門を出た時からですね。嫌いになったの。
身代わりに気づいてなかったってあれです。
そんで偽善者もどきな「おこんさんを大事に」という台詞。

さらに時が経って、山形の紅花専売騒動の折の態度。
すでにこのとき、2年の歳月が経ってるわけで。
なのに、
「奈緒は過ぎた嫁にございます。さりながら、奈緒の心を捉えた男子は
ただ一人、坂崎磐音なる御仁にございます」

(26巻-紅花ノ邨 第五章 半夏一ツ咲き より抜粋)
内蔵助さんに、夫に、こんな台詞吐かせますか。奈緒さん?
しかも、奈緒を探し当てた磐音との再会シーン、
「おこん様と祝言を挙げられたと風の便りに聞いておりました」
「坂崎磐音はもはやこの世におらぬ」
「いえ、奈緒の心には永久(とこしえ)におられます」

(同 抜粋)
顔合わせないで言うんだよね。背中向けたまんま。
心底本気ですか。怖いよ。
内蔵助さんは磐音が佐々木家に入ったことも所帯をもったことも
知らなかった。けど、奈緒は知っていた。
江戸から遠く離れた山形で、かっての許嫁のかすかな噂も必死に集める女。
ここまでくると、一途に健気じゃなくて、粘着質で執念深い女に成り
下がってますって。
一応、きちんと内蔵助さんの妻、前田屋の内儀としての役目は表向き
果たしているだけに、内蔵助さんからすれば、手酷い裏切りやなぁ。
(いや、本人承知の上ですけど)

金で買われた女だけど、心までは買えませんってか?
だったら、くたばるまで吉原にいて、磐音だけを想っていればよかった
のでは?どんなに金を積まれても、諾とするか否とするかは、女の心ひとつ
なのですから。無理矢理落籍(ひか)された訳じゃないのだから。
このままだと内蔵助さんは一生、女房を金で買った後ろめたさを抱えたまま。
それでも惚れてる女だから耐えるしかない。
気の毒に。

ただこれ、磐音の側には全くというくらい心残りがないのが、笑えたと
いやぁ笑えたかも。
ほとんどただの義務で参上しました的な。困惑してたとゆーか(苦笑)
おこんはさすがに奈緒の本心に動揺してたようですが、磐音はそこんとこ
きちんと言葉で諭すんですね。
「奈緒どのは奈緒どのの選んだ道を歩かれた。それがしはまたそれがしの
道を進んだ。そして、そなたと結ばれた。二人はそれぞれ別々の道を歩く
運命にあったのじゃ。おこん、それがしの女房はそなたなのじゃ。
過ぎ去った昔に拘りすぎると、手中の幸せを失うことになる。
分かるな、おこん」

(27巻-石榴ノ蠅 第一章 紅板 より抜粋)
ここで上手く言葉に出来なくて黙りこくってしまって、ますます
奥さんの気持ちを疑惑で固まらせて、というのが不器用な一般的な
男なんでしょうが(笑)
なんたって磐音ですから。その素直さは天性ですから。
さらに
「旅をしてよう分かったぞ」
「なにがでございますか」
「磐音は心からそなたに惚れておる」

(同 抜粋)
ちゃっかり、ご機嫌取りも(笑)ごちそうさまです(笑)
ここまでいわれりゃ、女冥利に尽きるってもんですわ。

ともあれ、奈緒がここまで嫌な女になるとは思ってもいなかったとはいえ
これで磐音夫婦の絆もより強くなればいいなぁと。
これからきっとふたりの子供も産まれて、賑やかにのんびりと、でも
結局なんかしらの事件には引きずり込まれつつ、田沼親子との闘いも
正念場となっていくのでしょう。
まだまだ楽しみです。はい。
(出来れば奈緒はもぅ出して欲しくないなぁ;;;)

と、とりあえず、27巻までの感想でした。
感想になってないけど(^^;

投稿者 fran : 2009年06月19日 23:51

コメント

初めまして。
こんな長くて、思ったままの垂れ流しな文章を読んでいただき
ありがとうございました。

投稿者 fran : 2011年09月08日 00:12

非常に興味深い、ありがとう

投稿者 infutuaftus : 2011年09月06日 01:00

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