2008年11月16日

無痛

久坂部羊:著者
幻冬舎文庫

「BOOK」データベースより
見るだけですぐに症状がわかる二人の天才医師、「痛み」の感覚を
まったく持たない男、別れた妻を執拗に追い回すストーカー、
殺人容疑のまま施設を脱走した十四歳少女、そして刑事たちに
立ちはだかる刑法39条―。
神戸市内の閑静な住宅地で、これ以上ありえないほど凄惨な
一家四人残虐殺害事件が起こった。凶器のハンマー他、Sサイズの帽子、
LLサイズの靴痕跡など多くの遺留品があるにもかかわらず、
捜査本部は具体的な犯人像を絞り込むことができなかった。
そして八カ月後、精神障害児童施設に収容されている十四歳の少女が、
あの事件の犯人は自分だと告白した、が…。

「廃用身」、「破裂」に続く、現役の医者が書く衝撃の医療小説。
…といいたいとこだが、衝撃というか、気持ち悪かっただけ。
ネタバレになるから書いたらいけないんだろうけど、、、
でも、現実にあったあの殺人事件の遺体の処理の仕方、まさかこれ
読んでヒントにした訳じゃないわよね?
というくらい、たぶん、本当にできるんです。。。
人を殺して、、、その死体を、、、その描写を細かく、、、
ひえぇぇ〜

もぅ、そればかっりに頭がいっちゃって、肝心の中身がどうなのか
忘れそうになるじゃん。
正直、質が落ちてますね。
新しいの書くたびに、だめになっていくような気がする。
小説としては、かなりの部分に手を抜いてる。
いや、手を抜いてるのか、技量がないのかは知らんが。

最初こそ、その奇抜さに驚くけど、2作3作といくうちに
読む方も慣れちゃうから、粗が目立ってくるという、たぶん
最悪な方向にいっちゃってるんだと思います。
もう諦めて、医者業務に専念した方がいいんじゃないかなぁ。。。

ただ。
「人を殺せる人間は、病気だ」というのは、わかる気がする。
主人公の為頼は医者でありながら、病気は自然現象であり、
医者が病気を治すのなんのは錯覚だという考えの持ち主であるが、
人殺しもそれと同じように、人格が病気なんだから、第三者が
どうにかできるものではない、というのである。
人を殺すには膨大なエネルギーを必要とする。
正常ならば、そんなエネルギーを維持できる神経はない。
しかし、異常というのでもない。
病気なのだ。人を殺したいという病気。
そして、病気は自然現象だから、治るならほっといても治るし
治らないなら、なにをやっても無駄だと。
カウンセリングなんかただの自己満足だと。

そして人を殺す人間は最初からそのエネルギーをもって産まれてくる。
「犯因症」が現れるという。

荒唐無稽だが、あながち間違ってもないんじゃないか?とも思う。
私は、人を傷つける、あるいは殺す人間は、想像力がないのだと思ってた。
自殺する人間も然り。
人を刺す。ナイフが皮膚を肉を切り裂く。そのときの痛み。
それが想像、というか自分にされたらどれだけ痛いかの想像を置き換える
ことができない人間が、平気で殺すのかと思ってた。
ま、ある意味そういうのを病気というんでしょうが。

かといって、すべての犯罪者が病気っていうのも、それこそ39条を増長させる
ことになりかねない。
すげー難しくて、だんだん頭痛くなってきたですよ。

小説としてはいまいちだが、投げかける疑問は、常に考えさせられる。
もしかして、それが狙い?

投稿者 fran : 00:08 | コメント (0)

2008年07月16日

破裂(上・下)

久坂部羊:著者
幻冬舎文庫

「BOOK」データベースより
医者の診断ミスで妻を傷つけられた元新聞記者の松野は、“医療過誤”を
テーマにしたノンフィクション執筆を思いつく。
大学病院の医局に勤務する若き麻酔科医・江崎の協力を得て、医師たちの
過去の失敗“痛恨の症例”や被害患者の取材を開始した。その過程で、
「父は手術の失敗で死んだのではないか」と疑念を抱く美貌の人妻・
枝利子が、医学部のエリート助教授・香村を相手に裁判を起こす。
が、病院内外の圧力により裁判は難航。
その裏で医療を国で統制しようと目論む“厚生労働省のマキャベリ”
佐久間が香村に接触を始める…。
枝利子の裁判の行方は?
権力に翻弄される江崎と松野の運命は?
そして佐久間の企図する「プロジェクト天寿」とは?
大学病院の実態を克明に描き、来る日本老人社会の究極の解決法まで
提示する、医療ミステリーの傑作。

「廃用身」の作者です。
そのときもかなり、ショックを受けたというか、あまりの迫力に
たじろいでしまいましたが、今回は逆にもっとありえないので
安心して小説として読む事ができました(苦笑)

つか、久坂部氏、現役の医者よね?
なんか、老人に恨みでもあるのでしょうか;;;
これ以上年寄りが増えたら、国が破綻する、というのは現実にも確かに
そうなんですけど、だからといって、殺してしまえって;;;
しかも、正当に、問題なく、痛みも苦しみもなくぽっくりと。
ものすごい、理想的なんですけど;;;

ただ、年寄りが抱えてる問題、たぶんそれは本当なんだろう。
そういう現場を見てきてるだろう重さは、きちんと伝わります。
そんでもって、医者の現実、ものすごい頭来るんだけど、まぁ
そんなもんでしょうねぇ。

でも、ちょっと詰め込み過ぎかもしれない。
焦点がぼかされた感じがある。
医者でありながら、医者に批判的、だと思っていたのだが。
焦らず急がずじっくり的を絞った作品描いて行く方がいいと思う。

思ったより、確かに専門用語もバリバリだけど、読みやすいので
興味のあるかたはぜひ。

投稿者 fran : 01:01 | コメント (0)

2006年04月17日

廃用身

久坂部羊:著者
幻冬舎文庫

うらがきより
廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。
神戸で老人医療にあたる医師・漆原は、心身の不自由な患者の
画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。
患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミが
かぎつけ悪魔の医師として告発していく─。
『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない衝撃的かつ鮮烈な小説
デビュー作。

こ、、、これは、、、
小説なのか実話なのか?!読み乍らも頭の片隅にあったのは
もしかして現実にあったことかもしれない、という戦慄。
何度も何度もネット検索かけそうになりましたよ。
こんな背筋が寒くなる小説、初めて読みました。
ホラーなんか目じゃないっす。あまりにもリアルすぎます。

前半はその医師・漆原の手記で、廃用身がどれほど老人たちにとって
邪魔な存在かを、実際に切断手術をうけた老人が明るく前向きな性格に
変わっていく様子や、痴呆が改善された実例などをあげて、綴られて
いきます。
そして後半は、その噂を早い段階で聞きつけ、接触してきた編集者
矢倉の「編集部註」という形で成り立っています。
やがて漆原が「Aケア」と名付けた切断手術がマスコミに知られる
ところとなり、糾弾されていく、その様子などを外から見た目で
描いていきます。

これは、老人医療の近い将来かもしれない、そんな恐ろしさです。
麻痺した腕や足は、コントロール出来ない分、思いがけない動きを
します。それが本人にとっても介護する者にとっても、邪魔なだけの
存在というのです。しかし、だからといって切ってしまえ、もちろん
漆原としてもそう簡単に考えていたわけではない、そんな心理描写も
延々とされているのですが。
人が人として生きるというのは、何なのか?
改めて考えさせられる1冊でした。

きわめつけは、これを「矢倉が株式会社山月館という出版社から
出しました」という”奥付”まで入ってること。
芸こまか過ぎ(T^T)

投稿者 fran : 23:19 | コメント (4)